マルックと畑へ向かう車の中で、「40歳は重いよなぁ」という話をした。
こんなバカな30代は・・・と思った瞬間、世界のナベアツの「3の付く数字と3の倍数でバカになります」のネタを思い出した。
「サァーンジュウ、サァーンジュイチ・・・」とマネをして、最後は重々しい声で「40」と決めた。ふたりは大笑いして、「ほんとに40はドヤ顔で決めたいな」と肩を叩いた。
マルックはヤル気になっていた。本来なら昼ごはんで帰るつもりだったが予定変更だ。
大雑把なマルックに対して、僕は何度も作業のやり方に注文を出した。こういうときの精神状態はあまり良いものではない。
3時半くらいまで作業をして、手のマメがつぶれて、肩もくたびれて帰ることにした。
その車の中で、僕はマルックの話に耳を傾けることになる。
マルックは「心地よい疲れだ」と言った。
夕陽が眩しかった。
「なんかこれまで生きてきたことを思い出さないか?」
「例えば?」
「学生時代のこととか、結婚したときのこととか・・・生きてるっていいな」
僕は小言を言っていたこともあり、少し気分を害しているのではないかと心配していた。
ところが、マルックはただ「気持ちいいホルモンが出て、世界が美しく見える」と言った。
夕陽が稲の刈られた田園を薄緑とも薄黄ともつかない仏色に染めていた。
・・・