2012年10月31日

フマール農園 65. 世渡りできますよ

10月。
今日もせっせと畝作りに励んだ。
「これが最後だ。二度と作り直さんぞ」と心に決めると、旅立ちの準備をしている気分になった。

ホームセンターで売り出されていた苺の苗を、ほったらかし畑の輪郭に植えた。
苺というのは意外にもたいへん丈夫で育てやすい。
雪にも夏の暑さにも負けず、「でくの坊」と呼ばれても平気で、数年に渡って赤い歓喜の実をつける。
連作障害があるみたいだが、多年草なのにどういうことか?

野良仕事のあと、恩師からもらった辛口(トロッケン)の白ワインで乾杯。
TV番組に「クニ子おばば」という日本でただ一人焼畑をやっているお婆さんが映っていた。
森を焼いて、1年目にソバ、2年目に豆、3年目に忘れた・・・と4年間だけ作物をつくり、あとの26年間は放っておく。そして、森がピークを超えて老化しはじめる30年目に、ふたたび山を焼く。
切り株からキノコが生えてくると、バクテリアによる分解が終わって森の再生が始まったサインだという。

クニ子おばばが舌をペロペロ出しながら草を刈るのを見て、マルックは獣みたいだと大笑いした。
おばばは「この森と種と塩さえあれば世渡りできますよ」と言った。
おばばの世渡りとは人間社会のことではなく、生態系のことだった。

おばばが大木の下に静かに座っている映像が流れた。
亡きご主人と共に憩う姿が偲ばれて、悠(はる)かな思いになった。
・・・
posted by from_grassroots at 23:58| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする