近ごろの僕とフマールの毎日もだいたい似たようなもので、夏の猛暑も相まってか、のんべんだらりとしていてまるで覇気がない。
「ここで一発ホ―ムランを!」と大声でうそぶいてみても、やっぱり虚しいだけだった。
諦めていた。自分たちの毎日がそんなに簡単に変わるわけがないと・・・
今日僕たちは珍しく朝から車を走らせていた。山を目指して。
といっても山登りをするわけではなく、その麓の農村でブルーベリーの収穫の手伝いをするためだった。
途中窓を開け、緑の中、朝の新鮮な空気を鼻いっぱいに吸い込むと、僕は幸せな気持ちになった。
隣の相棒は鼻歌なんて歌っている。どうやらフマールも同じらしい。
車は山道をぐんぐん駆け上がり、峠にさしかかろうとしていた。
その時だった。
一瞬僕の目に信じられないものが飛び込んできて、「あっ」という声が出たかと思うと、ハンドルを右へ切っていた。
・・・