2010年02月15日

フマール農園 36. 実存の香り

C20090209畑.JPG C20090209山.JPG
C20090209大根.JPG C20090209混生.JPG

2月。
家に帰ると、種が届いていた。
僕はそれを全部開けて、大きさ別に3つの袋に分けた。
種を選別しながら、ずっと考え事をしていた。
辺見庸のドキュメンタリー番組を見ながら。

僕は辺見氏ほど“実存に対して真摯に向き合う”作家を知らない。
あの人はずっとそうやって生きてきたから、話せる作家になれたのだと思う。
ここでの“話せる”とは、「おしゃべりが上手な」という意味ではなく、「内観しながら少しずつ紡ぐ。文章を推敲するような深さで、言葉を発することができる」という意味だ。

僕はこれまで偽りの言葉を書いている。
それも、もう、止めようかと思う。

マルックと一緒にシードボールを作り、干している間に遠くの温泉まで足をのばした。
戻ってきたのは日が暮れてからで、半月の下、2人はシードボールをばら蒔いた。

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2010年01月31日

フマール農園 35. パウダー粘土

C20090121畑.JPG C20090126山.JPG

1月。
ほったらかし畑に巨大な赤カブが1本生えている。
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今年の春もシードボールを蒔こう。

畑小屋で火を焚いて、みんなでパウダー粘土を作った。
比較的あたたかい日で、思ったよりもずいぶん楽な作業だった。

掘ってきた粘土(っぽい土)を広げて乾燥させておく。
それをバケツに入れて、棒で突いて、ふるいにかける。
それをバケツに入れて、棒で突いて、ふるいにかける。
それをバケツに入れて、棒で突いて、ふるいにかける。

以上、おしまい。小1時間でティータイム。

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2010年01月17日

フマール農園 34. 2QQ8

去年をふり返ってみる。

4月
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5月
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6月
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7月
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8月
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9月
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10月
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11月
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12月
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遠景だとよくわからないな・・・

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2009年12月31日

フマール農園 33. ミニチュア

12月。
クリスマスの7日前、北の国からフルーツの苗木が届いた。
「ちょっと遅すぎだろ!」
みんなで訝(いぶか)りながら、手分けして穴を掘って植えた。
S20081217苔オブジェ.jpg

今年ももう終わる。
思い立ってから2年の歳月が流れた。
S20081224混生.jpg S20081224イチゴ.jpg
実物は、写真の感じよりもずっと小さいけれど、夢見たものに雰囲気が似てきた。
イチゴは意外に逞(たくま)しい。
冬は、オール・プランツ、ぴったんこ。

冗談か本気かわからない、このキホーテな物語に
1年間お付き合いくださった皆さま、心より御礼申し上げます。
どうぞ良い年をお迎えくださいませ。

M・K・フマール

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2009年12月16日

フマール農園 32. 麦踏み給ふこと勿れ

12月。
S20081211麦踏み.jpg

今秋はJAの麦の卸値がなかなか決まらず、種の受け取りが11月になった。
急いで仲間に召集をかけると、キコリザワのつれない一言が。

「シードボールにする必要、ある?」

するどい!!・・・いや、めんどくさいだけだろう。

以前、秋の種まきをした後に、草を刈るかどうかを話し合ったことがあり、
その時点での夏草の勢いは、最盛期は過ぎていたものの依然として圧倒的で、
「刈ろう」と提案したのはキコリザワで、
だけど僕はうなずかなかった。
S20081110ヨモギ.jpg
はたして、秋が深まるにつれて、夏草はゆっくりと倒れていった。

今回はキコリザワの言う通りのような気がして、
“シードボール”“すじ蒔き”“そのまま”の3パターンを試してみた。

しかして、1ヵ月後の結果は・・・・・・大差なし。  オー、イェ!

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2009年12月01日

フマール農園 31. お酒さま

11月。
目を覚ますと、携帯にメールが入っていた。
「朝5:50。飲んでいて、いま帰宅。昼から合流します」
マルックはよく遅れてくる。

昨日は“みぞれ”が降り、冬将軍の足音がはっきりと聞こえるようになった。
畑草たちは緑のまま大地にひれ伏して、軍の到来を待っている。
花が生み落とした2年目のワイルド小松菜そしてワイルド水菜。
C20081120畑.JPG C20081120チンゲンサイ.JPG C20081120水菜.JPG

キコリザワの勧めで“ニンニクの葉”をつまんでみる。
ニラのような食感だが、味と香りはニンニクそのもの。
食欲がもりもり湧いてきて、「味噌ラーメンを食べに行こう」ということになった。
S20081003ニンニク.jpg

帰りの車ではいつもいろいろな話をする。
酒好きのマルックは、バーで語るような素敵なネタをたくさん持っている。
「モルトウィスキーの歴史」や「“お酒さま”の力を借りないと告白できない話」など。

「そう言えば、あの生姜どうだった?」
「腐ってたぞ」
「そんなはずないだろう」
S20081003生姜?.jpg S20081003生姜?2.jpg
帰って調べてみると、“ウコン”でした。

「飲んだら、飲んどこ。ウコンの力」・・・お後がよろしいようで。

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2009年11月14日

フマール農園 30. 猪寇(いこう)

11月。
ホタルを見た夜。
クロワッサンの照らす暗い峠を、帰りの車は下っていた。

「ウリ坊だっ!!」
マルックの声がした瞬間、数発の弾丸が放たれ、山の斜面を流れるように上っていった。
それらトビ色の樽のようなものは、一瞬だけ僕たちの車と並走し、すぐに林に消えた。
作ったばかりの柵への不安が過(よ)ぎりつつも、理由もなくワクワクした。

先頭の大きな樽につづく3つの小さな樽は、白く輝いているように見えた。
その形や色を表現するのに、昔の人は「銀まくわ瓜」を当てがった。

半月後、元々きちんと囲われている“ほったらかし畑”で、弾丸は炸裂していた。
S20081113イノシシ襲来3.jpg S20081113イノシシ襲来4.jpg
ねじ曲がったトタンを手で戻そうにも、ピクリとも動かない。
そんな強度のものではないのだ。
イノシシは好物だけを完食して、山へ帰っていた。

近ごろこの辺りでは、ヤマノモノがよく里に出るようになった。
そして、“呼び寄せる”という理由から、サツマイモ作りは敬遠されている。

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2009年10月31日

フマール農園 29. ひかり

10月。
トリシアが畑の隅っこにしゃがんで、四つ葉のクローバーを探している。

S20081023ヨモギ.jpg S20081030混生1.jpg 
S20081003サツマイモ.jpg S20081003ソバ.jpg
S20081003ニンニク.jpg S20081030大豆.jpg
「良すぎる・・・」
ショータイムの予感。
雑草の弱まる冬には、野菜はよく育つはずだ。
悲劇的だった昨年でさえ、大きなダイコンが2本も生えたのだから。
しかも、あの時よりも、何かしらいっぱい顔を出している。

生姜を掘ってみる。
S20081003生姜?.jpg S20081003生姜?2.jpg
「キコリザワ、マルック、今すぐ ボナペティ!今、すぐに」
「あぁ、じゃあ、もらって帰るよ」
感想はまた後日。

といっても、のんびりしてばかりも居られなかった。
山での柵作りが佳境を迎えていた。
ギリギリまで作業をして夕闇を戻ると、畑小屋の前で何かが光ったように見えた。
目を凝らす・・・ホタルだ!
「こんな寒いのに!?」
それは間違いなく蛍だった。ゆっくりとゆっくりと点滅していた。
僕たちはしばらく蛍の光を眺め、それから黙って車に乗り込んだ。

そうそう、トリシアは四つ葉のクローバーをちゃんと見つけましたよ。
ちょっと虫に喰われているところが、ご愛嬌。

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2009年10月15日

フマール農園 28. 澤風(さわかぜ)が吹く

10月。
植樹祭でヤマノモノの襲撃を受けて以来、すこしずつ柵を作り直していた。
せっかくなので拡張しつつ・・・
その間も幾度となく結界は破られたが、楽しいことに失うものがなかった。

杭(くい)を挿すための穴を掘っていて、新しい発見があった。
粘土が出てきたのだ。
S20081003粘土発見.jpg
いろんな所から出てきて、案外どこにでもあることがわかった。
これでわざわざ陶芸用のパウダー粘土を買わなくて済む。

さて、フロンティアにはキコリザワ。

あらかた開拓して最後の道を通そうとしたとき、「帰りましょう・・・」と気弱な声がした。
見上げた喬木(きょうぼく)の枝には、「茶色のクス玉」がぶら下がっていた。
その唐草紋様は、たしかに少しばかり不吉な印象がした。

「アレワー!大丈夫ヨ。何モシナケレバ刺サナイヨ」
「いやいや、無理でしょ。帰ります。そもそも、あなたが信用できない」
いつもは“益荒男(ますらお)ぶり”のキコリザワも、スズメバチには白旗だ。

S20080916スズメバチの巣.jpg
不思議なことに、ふたたび来ると、スズメバチの巣は落ちていた。

今日も谷には澤風(さわかぜ)が吹く。

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2009年09月30日

フマール農園 27. ナスカ

9月。
はじめはジャガイモかと思って、根元を掘った。
なんにも出てこないので、恐る恐る元に戻し、知らん顔をしていた。
S20080710トマト.jpg

すると・・・2ヵ月後、こんな感じに仕上げてきましたよ、ナスカは。
S20080903トマト.jpg S20080828トマト2.jpg
今までにできた野菜は、じつは根菜類ばかり・・・トマトはナス科。
この違いはねぇ、大きくないでしょうか。

さて、お味の方は・・・
S20080911トマト2.jpg
「うまいじゃん!」とマルック。
「まぁ食べれるな」と僕。
そう答えたものの・・・あんなぁ、、あとでなぁ、、ビチビチやねん。
市販のトマトの方がおいしいよ。
涙がこぼれそうになった。

S20080925神々の森1.jpg
ふり返ると、神々しい山の端(やまのは)が静かに僕たちを見ていた。

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